電子ビーム溶接の利点
触れることの難しい電子の力を使った電子ビーム溶接のメリット。
溶接を行うのならエネルギー効率も考えねばなりませんが、その点でも電子ビームは かなり優秀な成績をみせつけてくれるでしょう。 照射された電子の全てが有効に活用されるほど完璧ではありませんが、それでも 約9割もの電子が熱エネルギーとなって働いてくれます。 少しくらいは赤外線を出したり脇に逸れてしまうので100%とか98%という ハイスコアを出しはしませんが、9割も狙い通りに動いてくれるのなら充分です。 日常会話の中で使われる場合、9割という言葉は「ほとんど」という意味で使用 されますし、たいていの場合は残りの1割は気にされないものです。 プロ野球の4番バッターの打率でも3割5分を超えていたら相手ピッチャーから 恐れられる強打者となりますし、3割ジャストでも侮れないバッターとして警戒 されるのではないでしょうか。 もしも打率が9割のバッターがいたらまともに勝負したくないと考えてしまう ピッチャーの心理を考えても、この数値はとんでもなく優秀であるのです。 無駄の少ない技術、それが電子ビームなのです。 マシーン一式でみても稼動させるのに投じたエネルギーの半分が加熱エネルギー になるので、電気代のコストを計算してもお得な装置かもしれません。 これが半導体レーザーなら約3割、炭酸ガスレーザーなら約2割なので、並べて 比較してみれば一目瞭然の素晴らしい性能です。 電気代やら溶接に必要なエネルギーが少ないということはそれだけ加工される 製品にかかるコストも下がる可能性がありますし、使っている工場は儲かります。 従業員のお給料を上げて喜んでもらったり、社員旅行で日帰りや2泊3日ではなく 6泊7日の海外旅行を企画する余裕も生まれるでしょう。 マシーンの導入時には初期費用がかかりますが、これだけエネルギー効率が良ければ すぐに元は取れてしまいます。 また電子ビームは深溶込溶接が大得意です。 加工したい金属に電子ビームをビビビと当てると、そこは瞬時に加熱されて触る ことができないほど高温になります。 実際にはビビビなんて音はしませんが、雰囲気的にそう表現しただけですのであまり 気にしないでもらえると幸いです。 高温になってもその部分が固体の金属のままだとその先にはなかなかいけませんが、 電子ビームは多大な熱エネルギーとなるので蒸発温度まで加熱するのも容易いのです。 険しかった道のりも蒸発させてしまえば遮る物は蒸気だけとなり、スイスイ進む ことができ望みどおりのキーホールを形成します。 条件さえ整えてやれば10センチの深さのキーホールを完成させることが可能で、 他の溶接では実現できなかった深溶込溶接を行えるのです。 アーク溶接では熱を伝導させていきますが、加工された金属の姿はまるで違った 物に見えるのではないでしょうか。 アーク溶接よりもゆがみが少ないですし、狭い範囲で強固に接合するので完成品 の見た目もどことなく美しく、神々しいと言っても過言ではありません。 また電子ビームでの溶接は空気中ではなく、真空のエリアをを創生してそこで作業 が行われるのも神秘的かもしれません。 真空にされた空間内部には不浄な空気は一切存在しませんし、なんといっても 一般人にはそんな場所縁がありません。 話には聞いたことがあるけどどこへ行けば観察できるのか、興味があっても実物 の真空はこのへんにはなさそうだな、とかたまに考えていた存在の中で電子ビーム 溶接は行われている、これを知ったら男の子はさらにこのビームの虜になって しまいそうですし、メカ好きな女の子も虜になりそうです。 現実的な利点には真空中なら不純物が混入しにくい、というのもあります。