電子ビーム溶接
男性なら電子ビームには憧れの念を抱かずにはいられません。
ロボットが武器として使いそうな電子ビームを利用した溶接は、とても深い溶接が 出来るので多くの工場で歓迎されている技術です。 電子ビーム溶接の機械は制御盤や高圧電源も付いていますが、なによりも電子銃が マシーンで一番の見所となるでしょう。 この電子銃は陰極のカソード、陽極のアノード、そしてウェーネルト電極の3極 システムが一般的で、カソードから熱電子が取り出されてアノードの中で加速 されますが、その速度は驚くことになんと光の半分以上のスピードにもなります。 宇宙中で一番速いとされている光を超えることはさすがに無理なのでしょうが、 それでも充分に速いと言えるのではないでしょうか。 オリンピックのマラソンランナーなんかとは比較にならない速度ですし、短距離走 の選手でも電子ビームから射出される電子には勝てそうもありません。 競輪選手が愛車で得意なコースを走るのより、一流ジョッキーが乗った競走馬 よりも断然速いので、生身の人間が走ったって勝てる道理はありません。 新幹線よりも飛行機よりも高速なスピードに加速された熱電子は、電磁コイルに よって収束されるのですが、この収束もなかなか見事なもので直径1ミリ以下の 点に収まってしまうほどの収束ぶりです。 収束された熱電子を接合したい金属材料に当てると、母材の表面を少しだけ通過 してそちらの電子とぶつかって発熱します。 つまり電子ビームを当てるとそこが熱を持つ、しかもかなりの高温なので接合する ことが簡単にできそうな感じがしますよね。 一秒間で1千℃以上、やり方によっては一万℃まで加熱できるというから驚きです。 身近なところで熱い物といえばお湯ですが、そのお湯でも100℃で蒸発してしまう ことを考えると千℃という熱すら未知の領域ではないでしょうか。 どんなにアッチッチの熱湯でも100℃以上にはなりませんし、カップラーメンなど の調理に使うお湯も100℃以下、毎晩入るお風呂のお湯ならそれよりもはるかに 低温なので、100℃以上の物に触れたことのない人も多いかと思います。 そのさらに上を行く100℃の100倍の1万度ともなるとこの世の中にじかに 触れたことのある人はほとんどいないかと思われますが、ひょっとしたら暑い地方 に住んでいる方なら経験者もいるかもしれません。 日本ですと沖縄、ワールドだとインドやインドネシアが暑そうですので、そちらに お住まいなら1,000℃や10,000℃にも縁がある生活を送っているかも しれない、とかすかにですが思ってもいいでしょう。 電子ビームにはそれだけの威力があり、アーク溶接の100倍のさらに10倍近くの エネルギーを使っているのです。 この粒子線は相当特殊な用途でしか使われていないと思いたくなるほど魅力的な 響きを持っていますが、意外とあちこちでこの技術は使われています。 電子レンジも電子ビームを使っていますし、今ではほとんど流通していないブラウン 管のテレビも電子ビームを内部で発射しているのです。 電子ビーム溶接がわりとメジャーで、その他ですと戦艦や戦車に搭載されている武器 に使用されていそうな電子ビームですが、実はどこのご家庭にも1つくらいはある かもしれないほど普及している技術なんです。 変わった所では滅菌処理にこのビームを使うこともありますし、印刷物にもこの 電子ビームでインクを固めるテクニックもあるそうです。 男性の心をときめかせる電子ビームですが、どのような用途に使われているのかを 知ってしまうちょっとガッカリするかもしれません。 ですが私達の生活を支えてくれる素晴らしい技術であることは確かですし、この先 も電化製品や溶接マシーンに使われていくことでしょう。 ここではそんな素敵な電子ビームについて解説していきたいと思います。