男性なら電子ビームは一家に一台欲しがります

レーザーと電子

どちらも心地いい響きを持っていますが性質には差異があります。

レーザーは電子ではなく光子の粒子線で、電子ビームとは性質が異なります。 どんな性質なのかというと光は電子よりも波動性が高く、屈折などの現象も簡単に 起こるという点が電子との大きな違いとなります。 波動性ゆえの屈折がよくわかる事例としては、夕焼け空が紅に染まるのなんかが はっきりと目に見えるので理解しやすいでしょう。 直線に近い粒子線でなにかを加工したい場合、この屈折や回折がネックとなります。 一点に集中してエネルギーを集約したいのに、回折によってその点が狙ったもの よりも広範囲にぶれてしまうのです。 レンズの屈折を使って目標地点まで近距離で粒子線を当てようと頑張っても、 光子の特性でその点は広がってしまうのです。 高価な機材を使用しても光子線、レーザービームでは波動性が強いために最高に 素晴らしい結果を出すのは難しいのです。 その点電子ビームは光子よりも波動性が弱く、回折などの影響も少ないのでエネルギー を集中させるのには適しているのです。 素直にまっすぐ直進してくれる電子と思い通りに進んでくれないレーザー、どっち が扱いやすいかはいうまでもないことでしょう。 多少の回折は問題の無い分野で使うのならレーザーでも充分な働きをしてくれるで しょうが、電子ビーム溶接のようにデリケートな仕事には不向きなのです。 また光は発光波長がほぼ決まっており、短波長化をすると光学系が不透明になり、 ダイナミックレンジも数eVほどにしかなりません。 レーザーでは数eVのエネルギー範囲にしかなりませんが、それが電子だと千倍近く のエネルギーを秘めている計算になるのです。 このエネルギーが多いほど電子ビーム溶接では深い接合をさせることができます。 多くのエネルギーを抱えて射出された電子線は、少ないエネルギーのそれよりも 深く物質に突き刺さるように進入していきます。 物質の密度も関係しますが、入射エネルギーが大きいほど内部まで潜りこめる、 この理屈は納得してもらえるでしょう。 射出された電子線はその先で何度も衝突を繰り返しますが、勢い良く飛び出した 電子線の方がより奥深くまで進めるわけです。 表層部で勢いを失ってしまったら接合と言う加工をするにしてもその上辺でしか 結合させることはできませんが、奥深くまで進んでくれた後に内部から結合すれば ガッチリと結びつけることができるのです。 また電子の速度がある一定のラインをオーバーするとこの衝突はあまり発生 しなくなり、より深くまで進むことができるということも解明されています。 どうしてそうなるのか、これはちょっと難しい話になりますが電子が衝突する というのは正確にはぶつかってクラッシュするようなことではなく、近距離に接近 したものに対して力が働く、接触はしないけど影響を与えるようなイメージで、 投げたボールが壁やバットに押し返されるのとは違うのです。 ボールですとどんなにスピードがあっても進行方向にコンクリートの壁があれば そこで跳ね返りますし、金属バットでジャストミートされれば空高く舞い上がるか フェンスに激突するか、野手のグローブに吸い込まれます。 でも電子の場合はこのような物理的な接触とは異なり、接近した相手には触れずに 影響力を行使するのです。 その時相手が超スピードで過ぎ去ってしまうのなら影響を与える前に姿が見えなく なるので、ここで言う衝突は発生せずに通過していきます。 この出会いを少なくすれば速度を落とさないまま奥へと進めますので、電子の速度、 エネルギーをコントロールすればどこまで進めてどこで反応させるのかも思いのまま、 好きなように加工することができるのです。 レーザーだとこんな芸当は不可能です。